その挑戦が、孤独をなくす。「『孤独』は消せる。」吉藤健太朗

肩を組む人たち趣味・教養・雑学

今回紹介する本は、「『孤独』は消せる。」吉藤健太朗です。

「ロボットを使って孤独をなくす方法がある」

そう言われて、あなたはどんな方法をイメージしますか?
きっと想像もつきませんよね。

2020年4月から、コロナウィルスの影響により、外出自粛の日々が続きました。
会えない人に会えないというストレスを感じた人も多かったのではないでしょうか。
そんなときに活躍したのが、zoomなどを使った「リモート飲み会」などのオンラインでのコミュニケーションでした。

この本の著者が研究をしているのは、その先を行く「新たなコミュニケーションの形」です。
今回紹介する「『孤独』は消せる。」は、ロボットを介した「人と人とのコミュニケーション」を研究する著者が、自らの人生と、ロボットの研究について書いた本です。

  • 辛い孤独を感じた経験がある
  • ロボットの製作に興味がある

そんな人にオススメの本となっています。

著者はなぜ、誰のためにロボットを作りはじめ、孤独をなくそうとしているのか。
この本は著者自身の人生と共に、その想いを伝えてくれるのです。

孤独をなくすために生きる

「『孤独』は消せる。」の魅力は、

ロボットを通じて孤独をなくそうとする著者の生き方

です。

この本の著者は、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」の製作と、その利用により孤独をなくす方法を研究している「ロボットコミュニケーター」です。

著者の研究の根底にあるのは、小学校高学年からの3年半に及ぶ不登校体験でした。
体調不良による入院がきっかけになった「不登校」という孤独の体験。
そこから「自分がそこにいなくても、参加しているように周りに取り扱ってもらえるツールはこの世に存在していない」ということに気づいた著者。

テレビ電話ではできない「その人がその場にいるようなコミュニケーション」を実現するツールとして著者は、「もう一人の自分」としての分身ロボット「OriHime」を作りはじめます。

全身が動かせない障害を持つ患者をユーザーとして意見を取り入れながら、研究をし、開発された分身ロボット「OriHime」。
すでにレンタルが開始されており、「OriHime」は実用化にまで至っています

そんな「ロボットによるコミュニケーション」を創ろうとしている著者。
では著者はなぜ、どのようにして今の研究に至ったのか。
そしてこれからどうしたいのか。

本書では、そんな著者の人生を通じて、未来の人間のコミュニケーションの姿を思い描くことができるのです。

「『孤独』は消せる。」と著者の紹介

「『孤独』は消せる。」の著者は吉藤健太朗さん
吉藤オリィ」と名乗ることもあるようです。
吉藤健太朗さんは、ロボットコミュニケーター。そして(株)オリィ研究所の代表取締役です。

オリィ研究所 | オリィ研究所。株式会社オリィ研究所はOriHime-分身ロボットを開発・提供しています。
オリィ研究所。株式会社オリィ研究所はOriHime-分身ロボットを開発・提供しています。

この「ロボットコミュニケーター」という職業は、吉藤健太朗さんが自ら作ったものだそうです。
どんな職業かというと、「人と人とのコミュニケーションを支援すること」を目的として、ロボットを制作し、提供する職業のこと。

吉藤健太朗さんは、2004年に高校時代に「高校生科学技術チャレンジ」で文部科学賞を受賞。
その後も「OriHime(オリヒメ)」により2012年に人間力大賞で準グランプリを受賞するなど、その研究が評価されています。

そしてこの「『孤独』は消せる。」は、吉藤健太朗さんのはじめての本です。

本書に書かれているのは主に、著者のこれまでの人生と、そして分身ロボット「OriHime」の開発について。
堅苦しくなく、読みやすい文章で書かれた本書は、著者の人となりが伝わってくるものとなっています。

そしてまた、本書はただの自伝ではなく、著者の様々な考え方が詰まっているものとなっています。
例えば、孤独をなくすという自らの使命に行き着いた経緯や、ロボット作りへ至る思考の道筋などにも本書は触れています。

その考え方には著者独特の視点があり「ロボットをコミュニケーションに使う」といった、新たな可能性に気づかせてくれます。
そして読む人の人生の視野も広げてくれる、そんな魅力もある本になっています。

「『孤独』は消せる。」の内容

電話のそばにいる女性

一生を何に費やす?

本書で印象的なのは、著者の考え方、そしてその生き方です。

著者は高校時代に、「電動車いす」の研究により「科学のオリンピック」とも呼ばれる世界大会に参加し、部門3位に入賞しています。
不登校の体験などを乗り越え、日本としては初めての快挙を達成したのですが……。
その受賞のときに著者が感じていたのは、違和感でした。

「私は、本当は何がしたいのだろう」
そんなことを考えていたのです。

その少し前、著者は世界大会に関連したパーティーに参加していました。
そしてそのパーティー会場で出会った高校生から、ある言葉を聞いて衝撃を受けています。
その高校生が言ったのは「この研究をするためにこの世に生をけて、そして死ぬ瞬間まで研究する予定だ」という言葉でした。

自分と同年代の高校生が、すでに自分の一生を費やす研究を決めている
そのことに愕然とさせられたのです。

「快適な車いすを作る」
それまで著者は、そんな自分の研究に大きな意義と喜びを感じていました。
しかし「すでに一生を費やす研究を決めている」高校生の言葉を聞いた後、こう自らに問いかけたのです。
「死ぬまでとなると、どうだろうか?」
「自分は快適な車いすを開発することのためにこの世に生をけたのだろうか?」

そうして出た答えは「違う。死ぬまでは、嫌だ」というもの。
そんな著者が、「一生を費やす研究」を見つけたのは、車いすの研究に対する世間からの反応と、自分自身の体験からでした。

孤独をなくす

著者が選んだ一生を費やす使命は「孤独を解消すること」でした。

きっかけとなったのは、著者に寄せられた高齢者からの言葉です。
世界大会での受賞により、テレビや新聞に多く取り上げられた著者には、こんな「車いすが欲しい」といった相談が寄せられるようになったのです。

その声を通じて著者が気づいたのは、多くの人が「孤独」を感じているということ。
例えば、

  • 耳が遠くなった高齢者は、人の声が聞こえずコミュニケーションがとれないことに不自由を感じている
  • 足が不自由な高齢者は、他人に迷惑をかけたくないから、家から出なくなっている

そういった声は、著者自身の体験と重なります。
体調不良から、小学校高学年から3年半、不登校を続けていた著者。

「孤独」のストレスが人を狂わせる。
そのことを自身の体験を通して知っていた著者は、こう決めます。

「孤独」を解消することに、私は残りの人生をすべて使おう。

あと何年生きられるか、研究できるかはわからないが、世界大会で出会った高校生がそうであったように、「私は孤独を解消するために生まれてきた」と言えるようになろうと、このとき誓った。

「『孤独』は消せる。」吉藤健太朗

「OriHime(オリヒメ)」と今

その決意からロボットコミュニケーターとなった著者が開発しているのが、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」です。

「OriHime」がどんなものか、ぜひ一度、オリィ研究所の「OriHime」の紹介ページを見ていただきたいです。

OriHime | OryLab(オリィ研究所)テクノロジーの力で「不可能を可能に変えていく」
分身ロボットOriHime(オリヒメ)は、生活や仕 事の環境、入院や身体障害などによる「移動の制約」を克服し 、「その場にいる」ような コミュニケーションを実現します。

「OriHime」はAIで動く自立型のロボットではありません。
パソコンやスマートフォンで動かせる、人間の操作するロボットです。
ミニチュアの胸像のような姿をしており、額にカメラ、胸にスピーカーを備えています。
そして首や短い腕の部分での、動作による感情表現も可能となっています。
白く、曲線で構成されたその姿は近未来的であり、かわいらしくもあります。

この「OriHime」の用途は「コミュニケーション」です。
電話やテレビ電話ではできない「その人がその場にいるようなコミュニケーション」が可能なツールとして作られている「OriHime」。
その目的はもちろん「孤独を解消すること」

  • 病気やけがで教室に行けない子どもが、友達と一緒に授業を受ける
  • 全身が動かせなくなってしまう難病ALS患者が、家族とコミュニケーションをとる

といったことが可能なのです。

何より驚いたのが、「OriHime」がすでにオリィ研究所でのレンタルが開始していること。
月額40,000円でレンタルが可能となっているのです。

また、この「OriHime」のほかにも「OriHime-D(オリヒメディー)」という、遠隔での接客や身体労働のできる「移動能力を持ち、モノがつかめる」タイプもあるようです。
その実際の動作は、ぜひこちらの動画をご覧ください。

遠隔操作の“分身ロボット”で「未来のテレワーク」(19/10/07)

「Orihime-D」はまだレンタル可能な商品とはなっていないようですが……、今回のコロナウィルスの感染拡大により、日本でも徐々にリモートワークが増えています。
しかし、物理的にリモートワークが出来ない職種があるのも事実。
ですが「Orihime-D」は、新たなリモートワークの可能性を感じさせてくれるものとなっています。
そしてそれは「外に出るのが大変な人」や「体が動かせない人」も、外で周囲の人とコミュニケーションをとりながら仕事ができる、ということでもあります。

そんな時代は、すぐ近くまでやってきているのかも。
そんな、新たな未来を感じさせてくれるロボットとなっています。

「『孤独』は消せる。」のまとめ

「『孤独』は消せる。」の紹介でした。

世界大会などで活躍してきた著者の実績を見ると、つい「一般人とは大きく隔たりのある天才」と思ってしまうかもしれません。
そしてまた、天才は何を考えているかわからない。
一般人の苦しみなどイメージできない。
そんな風に考えてしまいがちです。

しかし著者の根底にあるのは、誰もが苦しむ「孤独を解消したい」という想いです。
専門用語など使われず、著者の体験やこれまでの研究について書かれている本書。
今回紹介した内容のほかにも、本書に書かれた著者の生き方や考え方にはきっと、心動かされるものがあるはずです。

ぜひこの本を読み、「孤独を解消できる」未来について知ってみてください。

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