ウソのようなホントのベルギー。「ブリュッセル漂流」諸橋智美

ブリュッセルの街並み小説・エッセイ

今回紹介する本は、「ブリュッセル漂流」諸橋智美です。

ブリュッセル漂流
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前回の記事では、ベルギービールを紹介させていただきました。

このベルギービールのことを調べていく中で、はじめて知ったのがベルギーは南北2つの文化圏に分かれていること。

今まで知らなかったその事実から、

  • 異質な文化と隣り合っているベルギーの人たちはどんな暮らしをしているのだろう?
  • ベルギーの人たちの暮らしに、ベルギービールはどんな感じで溶け込んでいるのだろう?

そんな疑問を抱いているときに見つけたのがこの「ブリュッセル漂流」。
この本はベルギー在住の日本語教師である著者が書いた、ベルギーの首都ブリュッセルでの暮らしのエッセイです。

ベルギーに限らず、外国(特にヨーロッパ)での生活について知りたい方にオススメの本書。
日本に住んでいるだけでは想像しづらい、ベルギーでの実生活について教えてくれる本となっています。

ありのままのベルギーを知る

「ブリュッセル漂流」の魅力は、

等身大のベルギーに触れられる

ところです。

著者は作家やエッセイストではない、ブリュッセルにある語学学校の日本語教師
この本に書かれているのは、2004年からベルギーに在住する著者が、飾ることもなければ、何か新しい発見をするでもない、ベルギーでの日々の生活です。
とはいえ、それはもちろん、平凡でもなければ陳腐なものでもありません。

日本から見れば異質な世界であるベルギー。その異質な世界で、外国人として暮らす著者
そんな特殊な立ち位置から、一人の人間の目で見たありのままのベルギーと、その首都であるブリュッセルでの暮らしを伝えてくれるのです。

「ブリュッセル漂流」と著者の紹介

「ブリュッセル漂流」の著者は諸橋智美さん
諸橋智美さんは、ベルギー在住の日本語教師です。米国の高校への留学や、外資系企業に入社した経歴をお持ちとのことで、海外経験は豊富な方のようです。

2004年からベルギーに在住されているとのこと。
本書が出版された2015年時点でも、10年以上現地で生活をしていることになります。

そしてこの「ブリュッセル漂流」は、諸橋智美さんの書いた、ベルギーでの暮らしのエッセイ集です。

元々は電子書籍の月刊誌「Vasco da Gama」の「ブリュッセルの中のヨーロッパ」という連載だったそうです。
これに加筆修正をし、「kindle本」としてまとめて出版をしたのがこの「ブリュッセル漂流」。
日本人には馴染みの薄い外国の知識を与えてくれる、非常に読み応えのあるエッセイ集となっています。

「ブリュッセル漂流」の内容

ベルギーのカフェ

ベルギーの冬季障害

「ブリュッセル漂流」の一番最初に載せられているのは「春の最初の日」と題されたエッセイです。そのテーマといえば、ブリュッセルにおける「春」

驚くべきことに、ヨーロッパの冬は「冬季障害」というものを引き起こすそうです。それが著者に現れたのは、ベルギーに来て4年目の冬。
それまでにもヨーロッパは「冬は暗いよ」「気が滅入るよ」と忠告は受けていたものの、ピンとは来ていなかった著者。
だが「体調が悪く」「眠気に襲われ」る状況が続き、それがはじめて「冬季障害」だと気づいたとのこと。

この冬季障害の一番の原因はビタミンD不足
ビタミンDは、食事のほか、日光を浴びることで体内で作られます。
だから、長いこと日光に当たれないベルギーの冬では、ビタミンD不足で倒れた日本人もいるそうなのです。

そのため、ブリュッセルでは春になり、日が照りはじめると突然、多くの人がTシャツやノースリーブといった肌を見せた姿でテラスや公園に現れるそうです。
はじめのうち、その姿を物珍しさから笑っていた著者も、今では「決してこれを笑えない」とのこと。

冬季障害を経験して以降、サプリなどでビタミンD不足に対処している著者も、冬になると春の訪れを待ちわびているそうです。
そんな、日本では想像もしづらい「春」に対するベルギーの感覚も、このエッセイでは描かれているのです。

フレミッシュとフランコフォン

ベルギービールの紹介の記事でも、ベルギーが北部の「オランダ語地域」と南部の「フランス語地域」に分かれていることは紹介しましたが、本書では2つの文化についてより詳しく触れられています。

この2つの文化圏に住む人は、それぞれ、

  • 「オランダ語地域」に住む人は「フレミッシュ」
  • 「フランス語地域」に住む人たちは「フランコフォン」

と呼ばれるそうです。
そして「フレミッシュ」は民族的にはゲルマン系で、「背が高い/髪の色が明るい/目の色は青やグレー」という特徴がある。
一方「フランコフォン」は、ラテン系で「小柄/髪の色は暗め/目の色も暗め」という特徴を持つ。

ベルギー全体ではフレミッシュが6割、フランコフォンが3割、外国人が1割という人口割合だそうです。
しかし、著者の住むブリュッセルでは9割がフランコフォンだとのこと。

この2つの言語間の対立や、その中で生まれたベルギー人の共存のための工夫についても書かれていますが、面白いのはやはり「違い」そのもの
中でも興味深かったのは、フレミッシュのバーベキューのエピソードです。

バーベキューといえば、日本人のイメージでは、

  • みんなで肉などを準備する
  • みんなで焼く
  • その中で各々が好きなのを選んで食べる

そんなイメージですよね。
同じベルギーでも、フランコフォンのバーベキューのやり方は、我々日本人と同様。
でもフレミッシュは違うらしいのです。

フレミッシュのバーベキューは、

  • 各々が自分で食べる肉を持ち寄る
  • 自分の肉を自分で焼く
  • 人の持ってきた肉には手を付けない

というもの。
フレミッシュは一人一皿主義。他人の物には手を付けない文化というか、習慣があり、こうなるそうです。
日本/フランコフォン流のバーベキューしか知らない身だと、「何でバーベキューなんかするんだろう?」とつい思ってしまうのですが……。

ともあれ、そんなフレミッシュ流のバーベキューも世界には存在する。
そんな新しい発見を与えてくれるエピソードでした。

ベルギービールとブリュッセルのバー

本書ではもちろん、ベルギービールのことにも触れられています。
著者がベルギーに来てからの最初の3年間は、中心部から若干離れた場所に住居を構えており、車で移動をしていたとのこと。
しかし地元の友人が増え、バーへ繰り出す機会も多くなったため、「飲み」のために街の中心部への引っ越しを決めそうです。

ブリュッセルのビール事情でいえば、冬が長い国でもあるため、

  • キンキンに冷えたピルスビール(日本の通常のビール)の需要のある期間は短い
  • 冬でも味わい深いビールが好まれる

とのこと。

そしてその飲み方は、好みの銘柄を選び、ウィスキーのようにじっくり時間をかけて飲むものだそうです。
それはまさに、ベルギービールのイメージそのもの。
読みながら思わず「やっぱりそういう風に楽しまれるものだよな」とうなずいてしまいました。

著者はベルギービールのほか、生の音楽や、カラオケ感覚で楽しまれる「踊り」のために、ブリュッセルにある様々なバーへ足を運ぶようになったそうです。
そしてまた、バーで見かけた奇妙な常連の姿などもエッセイには綴られています。

ベルギービール好きには実に魅力的に思える環境であるブリュッセル。
おいそれと足を運べる場所ではないが、ぜひ一度エッセイで触れられているバーに足を運んでみたい、そんなことを思わられる内容となっています。

「ブリュッセル漂流」のまとめ

「ブリュッセル漂流」の紹介でした。

世界には、日本とはまったく異なる文化や生活がある。
アタマではそうわかっていても、実際に直面したことがなければ、想像だにできないことは多いですよね。

本書は、ベルギーという「少なくとも名前は知っている」国でも、多くの「想像すらしない生活」がある、ということを教えてくれるものになっています。

あなたもぜひこの本を読み、ベルギーに暮らす著者の見る「ありのままのベルギー」に触れてみてください。

ブリュッセル漂流
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